患者から取り出した免疫細胞「T細胞」に人工の遺伝子「CAR」を組み込んで患者の体内に戻すCAR-T療法。

CARをうまく働かせ、がん細胞を認識しやすくすることで攻撃力を高め、海外の研究では、かなりの成果を上げている療法です。

そのような中、先日、信州大学と名古屋大学などのチームが次世代のがん免疫療法とされる「CAR-T」を改良し、免疫細胞の遺伝子を効率よく組み換えるとともに、普及の壁となっていたコストを20分の1以下に抑えることに成功したと発表されました。

早ければ今夏、急性リンパ性白血病の小児患者などを対象に、名古屋大学病院で臨床研究を始めるそうです。

免疫力を生かした治療は、手術、放射線療法、抗がん剤に続く第4の治療法として期待されています。

ただ、CAR-T療法は、これまで5000万円とされる費用が問題で、薬価が問題となったオプジーボよりもさらに高い医療費がかかるとされています。

ここまで高いとあっという間に国家財政が破綻してしまいますから、保険制度では運用が難しそうです。

また、自己負担にしてもこれほどの費用をねん出できる人はかなり限られます。

ということで、コストを削減する研究がすすめられている中、20分の1以下というコストは大きな成果と考えられます。

単純計算で200万円まで下がるわけですから、他のがん治療と比べてもさほど高くなく、それよりも低くなる場合もありえます。

現在は、まだ研究段階で急性リンパ性白血病の臨床試験がメインとなりそうですが、アメリカなどのこれまでの研究では濾胞性リンパ腫や慢性リンパ性白血病などにも効果があるとされています。

実現まではもう少し時間がかかりそうですが、早い治療方法の確立を期待したいところです。


リンク
中沢洋三氏 信州大学医学部小児医学講座
http://s-igaku.umin.jp/DATA/61_04/61_04_02.pdf